東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
目次
交通事故慰謝料には、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3種類があります。
入通院慰謝料とは、加害者側から償いの意味で支払われる損害賠償金の一部です。
交通事故によって怪我を受傷した場合、入院や通院には精神的苦痛が伴うため、入通院慰謝料の支払いによって被害者を慰める目的もあります。
入通院慰謝料は通院開始から完治や症状固定までの期間、または実際に治療した日数などを考慮しますが、怪我の程度も影響するので、金額は状況次第になります。
症状固定とは、「これ以上治療を続けても良くも悪くもならない」という状態なので、一般的には治療開始から6ヶ月程度が症状固定の時期になるでしょう。
また、入院や通院が条件になる慰謝料なので、痛みやしびれを我慢して仕事に出ていたときや、自宅療養したときは請求できないので注意してください。
接骨院や整体院など、病院以外の治療も基本的には入通院慰謝料の対象ですが、「医学的治療ではない」という理由で、保険会社が金額を引き下げる場合があります。
接骨院などの治療を受けるときは主治医の承諾をもらい、病院の治療も並行しておくとよいでしょう。
後遺障害慰謝料とは、交通事故の後遺症に伴う精神的苦痛に対し、加害者側から支払われる損害賠償金の一部です。
金額は14級から1級まである後遺障害の等級に応じており、自賠責保険の場合はもっとも低い14級で32万円、1級は1,150万円が支払われます。
後遺障害慰謝料は高額になるケースが多く、入通院慰謝料とは別に支払われるので、被害者が受け取る賠償金に大きく影響します。
ただし、後遺障害の等級認定が要件になるため、認定機関となる自賠責保険調査センターに申請しなければなりません。
申請は加害者側の任意保険会社を通じて行いますが、書面のみで審査されるため、診断書の内容や添付資料が不十分だったときは、非該当になる場合もあるでしょう。
認定結果に不服があるときは異議申し立てもできますが、同じ書類を提出しても結果は変わらないので、追加検査を行い、後遺症を確実に証明する必要があります。
医師任せでは後遺障害に認定されない可能性があるので、むちうちなどの後遺症が残ったときは弁護士にも相談してください。
交通事故の被害者が亡くなったときは、加害者側に死亡慰謝料を請求できます。
死亡慰謝料は遺族の精神的苦痛に対して支払われますが、被害者本人への慰謝料も含まれるので、遺族が本人に代わって加害者側へ請求します。
ただし、被害者本人の慰謝料は以下の相続順位に従って相続するので、全員が受け取れるわけではありません。
死亡慰謝料の相続順位
一般的な家族構成の場合、死亡慰謝料は配偶者と子供が受け取ることになるでしょう。
なお、死亡慰謝料の額は保険会社との示談交渉によって決まりますが、加害者がわからないひき逃げ事故では示談交渉を進められず、損害賠償訴訟も起こせません。
損害賠償請求権には時効があるため、加害者がわかったときから3年、または事故から20年経過すると請求権が消滅します。
加害者が判明している場合でも消滅時効は適用されるので、死亡慰謝料はできるだけ早めに請求しておきましょう。
交通事故の慰謝料は、収入・年齢・性別によって金額の変動はありません。
慰謝料の金額を決める「3つの基準」があり、その基準によって決まっています。
加害者や加害者が加入している保険会社が支払う慰謝料については、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3種類の基準があります。
自賠責基準とは、自賠責保険や共済の慰謝料算定基準です。
自賠責保険の保険料は国が定める基準に従っているため、どの自賠責保険会社から慰謝料を受け取っても金額は同じです。
また、自賠責保険は強制加入になっており、損害補てんが重視されているので、被害者に重大な過失がなければ、過失相殺による減額はありません。
ただし、自賠責基準の慰謝料は最低限の損害補償になるため、満額の支払いを受けても不足するケースがほとんどです。
たとえば、人身事故の補償には120万円の上限があり、治療費や休業損害も含まれているので、十分な被害者補償とはいえないでしょう。
自賠責保険では最低補償部分をほぼ確実に受け取れますが、加害者の車が車検切れだったときは、自賠責保険も期限切れになっている確率が高いので要注意です。
任意保険基準とは、任意保険会社から支払われる慰謝料の算定基準です。
自賠責保険の慰謝料には上限があるため、補償しきれない部分を任意保険でカバーします。
任意保険基準は各保険会社の独自基準になっており、計算方法は非公開ですが、自賠責基準の慰謝料と大きな差はありません。
ただし、任意保険基準の慰謝料は示談交渉次第になるため、対人・対物賠償の限度額が無制限でも、かなり低い金額を提示されるケースがあります。
被害者補償を重視した自賠責保険とは異なり、任意保険会社の営利が優先されやすいので、交渉力がなければ十分な補償を獲得できないでしょう。
保険会社の主張に反論したいときは、根拠となる証拠や資料も必要です。
任意保険基準の場合、被害者側の過失が軽微であっても、慰謝料が減額されるので注意してください。
弁護士基準とは、交通事故裁判の判例などを参考にした慰謝料の算定基準です。
弁護士基準の慰謝料は個別事情が考慮されるため、被害者に過失がなければ、自賠責基準や任意保険基準の2~3倍になるケースがあります。
また、弁護士基準は「裁判基準」とも呼ばれており、弁護士が代理人として慰謝料請求する場合、基本的に交通事故裁判と同等の結果を目指します。
慰謝料の算定根拠は「赤い本」と呼ばれる日弁連交通事故相談センターの実務書に準じているので、事故態様などを分析し、適性な慰謝料が算定されるでしょう。
弁護士が関係した交通事故は慰謝料が高くなるといわれますが、無理に金額を引き上げるわけではなく、司法の判断とほぼ同じ結果になるためです。
保険会社の慰謝料に納得できないときは、まず弁護士に相談してください。
まず、入院慰謝料はどの算定基準を適用するにしても、通院期間または通院実日数を慰謝料算定基準に設定します。
追突事故でよく用いられる自賠責基準の場合には、1日4,300円が基準として設定されており、計算式は次の通りです。
自賠責基準の計算方法
治療に要した日数 × 4,300円
治療に要した日数とは、「通院期間」と「通院実日数×2」を比較して、短い方の日数を意味します。
任意保険基準による算定方法は各保険会社とも非公開にしていますが、かつては統一基準があり、現在も旧基準に沿った算定が一般的です。
旧基準で算定した場合、通院や入院慰謝料は以下のような相場になります。
入通院慰謝料の相場(旧基準で算定した場合)
1ヶ月間の通院:12万6,000円(日額4,200円)
1ヶ月間の入院:25万2,000円(日額8,400円)
なお、1か月はカレンダーどおりの日数ではなく、30日として計算するので注意してください。
弁護士基準の場合には、民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準(いわゆる「赤い本」に載っている算定基準表)を参考に、慰謝料を算定することになります。
弁護士基準の算定方法については、次の記事が参考になりますのでご覧ください。
後遺障害慰謝料の算定は、どの算定基準を適用するとしても後遺障害等級ごとに慰謝料の金額が設定されています。
しかし、自賠責基準と弁護士基準では、同様の後遺障害等級であっても差が大きく出てしまいます。
例えば、追突事故では多くの人がむちうちに悩まされますが、そのむちうちが認定されることの多い後遺障害等級が14級です。
この14級の場合の後遺障害慰謝料が、自賠責基準では32万円ですが、弁護士基準では110万円となります。
このことから、非常に大きな差が出ていることがわかります。
後遺障害慰謝料の場合は、認定された後遺障害等級によっても差が出ますが、それ以上に適用する算定基準が重要です。
後遺障害慰謝料の算定基準については、次の記事に詳しく書かれていますのでご覧ください。
追突された場合、むちうちや打撲などの怪我を負うケースが多く、以下のような相場で慰謝料が支払われます。
慰謝料の相場を事故事例からみると、むちうちの治療で通院期間2週間、実通院日数4日だった場合、各算定基準ごとに以下の相場となります。
事例むちうちの治療で通院期間2週間、実通院日数4日だった場合の慰謝料相場
任意保険基準の算定方法は非公開ですが、自賠責基準は「通院期間」と「通院実日数×2」のうち、どちらか短い方で計算するため、金額は以下のようになります。
実通院日数12日、通院期間1ヶ月のむちうちと打撲であれば、以下の慰謝料相場となります。
事例実通院日数12日、通院期間1ヶ月のむちうちと打撲の場合の慰謝料相場
自賠責基準の場合、実通院日数(12×2=24日)の方が短くなるため、慰謝料は以下のように計算します。
追突事故の影響で収入が減少したときは、慰謝料以外に以下の賠償金も請求できます。
休業損害は収入の減少分をカバーする補償になっており、後遺症や死亡によって将来的な収入を失ったときは、逸失利益を請求できる可能性があります。
請求可能な要件や、計算方法は以下を参考にしてください。
休業損害とは、交通事故の怪我で仕事を休むことになり、収入が減ったときに請求できる賠償金です。
自賠責基準や弁護士基準で休業損害を請求するときは、以下のように金額を計算します。
自賠責保険の休業損害 | 日額6,100円×休業日数 |
---|---|
弁護士基準の休業損害 | 1日あたりの基礎収入×休業日数 |
自賠責保険の場合、日額6,100円を超える損害を証明できれば、1万9,000円を上限として増額されるケースがあります。
一方、弁護士基準で休業損害を計算すると、直近3ヶ月の給料などが基礎収入になるので、実際に発生した減収分をカバーできます。
家事労働者や学生は賃金センサス(労働者の平均賃金)をもとに基礎収入を計算できるため、休業損害は就労していなくても請求可能です。
また、入通院に有給休暇を使った場合も、休暇を取得する権利に損害が生じることから、休業損害の請求が認められています。
休業損害を請求するときは、会社が発行する休業損害明細書や、医師の診断書や診療報酬明細書を加害者側に提出しておきましょう。
逸失利益とは、後遺症や死亡事故で失うこととなった将来的な収入の補償です。
後遺症で労働能力が低下したときは後遺障害逸失利益、被害者が亡くなったときは死亡逸失利益を請求できるので、それぞれ以下のように金額を計算します。
後遺障害逸失利益 | 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数 |
---|---|
死亡逸失利益 | 基礎収入×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数 |
労働能力喪失率とは、事故前の労働能力を100%とした場合、後遺症でどれだけ労働能力が低下したかを示す割合になっており、後遺障害等級に対応しています。
労働能力喪失期間は基本的に症状固定から67歳までの期間になり、職業や後遺障害等級によって期間のカウントが変わるケースもあります。
被害者が亡くなると、今後は本人の生活費がかからないため、死亡逸失利益は生活費控除率によって一定割合を減額します。
ライプニッツ係数は中間利息の控除用ですが、考え方が少々複雑なので、逸失利益は弁護士に計算してもらうとよいでしょう。
追突事故の過失割合については、多くの場合は加害者が10割で被害者が0になります。
追突事故の被害者の過失が0になる理由は、同じ車線の後方を走っている車が危険な運転をしているかどうかを確認することは難しいことに加えて、対向車線などにはみ出さずに安全に避ける術が基本的にないからです。
そのため、追突事故の被害にあった場合は、理論的には加害者に対して自分の全損害を賠償金として請求できることになります。
通常、交通事故の被害に遭った場合、被害者自身が契約している保険会社に連絡をして、被害者自身の代わりに、事故の相手方と示談交渉を行ってもらうことになります。
しかし、被害者の過失割合が0の場合は、被害者が加入している任意保険の担当員が相手方と示談の交渉をすることはできません。
その理由は、保険会社が相手と交渉することができるのは、会社が保険の加入者にかわって相手に賠償金を支払わなければならない場合に限られるからです。
上記の制度の仕組みは、過失割合が0の被害者にとっては負担になります。
保険会社の担当員に交渉を任せられない場合、被害者自身が加害者側と交渉をすることになります。
しかし、被害者自身が示談交渉をするといっても、一般的に交通事故慣れしている被害者はそうそういないでしょう。
ましてや相手方となる保険会社は交通事故のプロのため対等に交渉することは非常に厳しいです。
こうした場合には、交通事故の示談交渉や裁判の相談を弁護士に依頼するという方法もあります。
交通事故に関する法的な知識と豊富な経験を有する弁護士に依頼することで、自分に有利な条件を勝ち取る可能性が高くなります。
弁護士に支払わなければならない費用も発生しますが、弁護士特約の活用もご検討ください。
弁護士特約とは、自動車保険の加入者やその家族が交通事故に巻き込まれた場合に、弁護士費用を保険会社の負担で支払ってくれる制度です。
弁護士特約を付けておくと、費用の心配をしなくて済むので気軽に弁護士に依頼できるようになります。
また、加入している自動車に関する事故に限らず、広く交通事故全般に適用されるので便利です。
事故に遭ったときにどのタイミングで慰謝料請求すればいいか、わからないかもしれません。
慰謝料請求のタイミングは、怪我の治療が終わった後になります。
追突事故発生から慰謝料請求までの流れは、下記の通りです。
追突事故の慰謝料請求までの流れ
慰謝料の受け取りまでの流れは、治療が終わる→示談→示談成立→支払いの段取りです。
基本的には怪我の治療が終わったタイミングで慰謝料を請求しますが、「これ以上治療しても症状が改善されない」ということもあります。
このように、怪我の回復が見込めない状態を「症状固定」と呼びます。
医師から症状固定の診断が出れば、後遺症が残った扱いになり、後遺障害認定を受けて後遺障害慰謝料の請求も合わせて行うのが一般的です。
怪我の状態・通院の回数などを総合的に判断して慰謝料を決めて、示談での金額決定に進みます。
慰謝料の支払いはお互いに「この金額なら支払いできる」という合意が必要です。
示談が成立すれば、約1か月を目安に慰謝料が振り込まれます。
追突事故の被害に遭った場合、事故直後の対応を間違えると、慰謝料や治療費を請求できなくなる可能性があります。
自動車保険に示談交渉サービスを付けていても、追突事故の状況によっては自分で加害者側と示談交渉しなければなりません。
追突事故で慰謝料請求するときは、以下の注意点をよく理解しておきましょう。
追突事故が発生したときは、必ず警察に通報してください。
人身事故や物損事故に関わらず、警察への通報義務は道路交通法第72条に定められています。
通報を怠った場合は同法119条の規定により、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金刑になる可能性があります。
また、警察が関わらない交通事故では、以下の書類が作成されません。
実況見分調書には事故状況が詳しく記載されるので、過失割合を決める際の重要な資料になりますが、警察を呼ばなければ作成してもらえません。
交通事故証明書がなければ事故発生の事実を証明できないため、慰謝料請求を拒否されたり、加害者が事故発生を認めなかったりする可能性があります。
程度の軽い追突事故だった場合、相手方から「この場で示談にしよう」と提案されるケースもありますが、安易に応じてしまうと慰謝料請求に影響します。
事故状況によっては、加害者に刑事罰を科さなければならない場合もあるので、追突事故が発生したときは必ず警察に通報しておきましょう。
追突事故の被害に遭ったときは、怪我の症状がなくても病院の診察を受けてください。
事故の直後は興奮状態になっており、すぐには痛みやしびれを自覚できないケースもありますが、むちうちなどの後遺症が残っているかもしれません。
追突によって手足などを強打すると、痛みを感じなくても骨折している場合や、頸椎へのダメージで重大な神経障害などが残る場合もあるので注意が必要です。
追突事故から何日も経って診察を受けると、「事故とは無関係な症状ではないか?」と保険会社に疑われてしまい、以下の賠償金を請求できなくなる恐れがあります。
怪我の症状を自覚しても、「軽い打ち身だからそのうち治るだろう」と思い込み、病院の診察を受けない被害者もいますが、自己判断はしない方がよいでしょう。
また、追突事故を物損として扱ったときも治療費や慰謝料は請求できないので、早めに警察へ申し出て人身事故に切り替える必要があります。
追突事故によって怪我を負ったときは、接骨院や整骨院ではなく整形外科で受診してください。
接骨院や整骨院の施術で怪我が回復するケースもありますが、医学的な治療ではないことを理由に、保険会社が慰謝料請求を拒否する場合があるので要注意です。
接骨院や整骨院は病院ではないため、施術を受けても治療として認められず、通院期間中の入通院慰謝料を減額される場合もあります。
整形外科以外で治療するときは、医師の指示で治療を受けている状況にしなくてはならないので、必ず主治医の承諾を得てください。
整形外科にはレントゲンやMRIなどの検査機械があるので、骨のひびや神経へのダメージなど、後遺症に影響する受傷部が早めにわかります。
後遺障害の認定も考慮すると、整形外科をメインに治療を続けるべきでしょう。
追突事故の被害から一定期間を過ぎると、加害者側の保険会社が治療費打ち切りを打診してくる場合があるので、安易に応じることがないよう注意してください。
交通事故の怪我には平均的な治療期間があり、骨折は1~2ヶ月程度、むちうちは3~6ヶ月程度ですが、症状や個人差から長期的な治療になるケースもあります。
しかし、保険会社は平均的な治療期間を基準に治療費を支払うので、完治や症状固定の時期が近付くと、治療費の支払いを打ち切ろうとしてくるでしょう。
まだ治療を続けているにも関わらず、治療費打ち切りの打診に応じると、以下のデメリットが生じます。
保険会社は病院側と連絡を取り合い、治療の経過を把握していますが、完治や症状固定は医師が決定します。
保険会社から治療費打ち切りを打診されても、痛みやしびれが残っているときは治療を続けましょう。
追突事故でむちうちなどの後遺症が残ったときは、必ず認定機関へ後遺障害を申請してください。
後遺障害の認定機関は損害保険料算出機構の自賠責保険調査センターですが、申請窓口は加害者側の保険会社になっており、以下の流れで後遺障害に認定されます。
後遺障害認定の流れ
後遺障害は書面のみで審査されるため、後遺障害診断書の内容や添付資料が不十分だったときは、非該当や下位の等級になる場合があります。
しかし、後遺障害診断書は治療方針などの決定用ではなく、あくまでも後遺障害の審査用なので、診断書の書き方に詳しくない医師も少なくありません。
医師任せで後遺障害を申請すると、適切な等級に認定されない可能性があり、異議申し立ても却下される確率が高いので、弁護士のサポートが必要になるでしょう。
加害者と被害者の過失割合が10対0になると、自分で加害者側の保険会社と示談交渉しなければなりません。
自分にまったく過失がない追突事故の場合、任意保険に示談交渉サービスを付けていても、保険会社が代理交渉できないので注意が必要です。
示談交渉サービスは自分(加入者)にも過失があり、加害者側に対して賠償責任を負うときのみ利用できます。
自分に過失がなければ保険金の支払い義務もないため、示談交渉サービスを利用すると、当事者ではない保険会社が介入することになり、弁護士法に違反します。
しかし、加害者に100%の過失があっても、被害者補償は示談交渉によって決まるため、専門知識や交渉力がなければ慰謝料を引き下げられてしまうでしょう。
保険会社によっては被害者側の過失を主張してくるケースもあるので、事実と異なるときは、自分の無過失を証明しなければなりません。
追突事故は自分で示談交渉する確率が高いため、どのように対応してよいかわからない方や、交渉が苦手な方は弁護士に相談してください。
追突事故は対応が難しい事故類型になっており、後遺症も残りやすいので、慰謝料請求や示談交渉は弁護士に依頼してみましょう。
弁護士が交通事故に介入すると、以下のメリットがあります。
弁護士に依頼するメリット
追突事故が発生した際、被害者は前方しか見ていないケースが多いため、加害者側の主張が通ってしまう可能性があります。
「前方車両のブレーキランプが点灯していなかった」など、事実ではない主張があったときは、弁護士に事故原因の分析や示談交渉を依頼してください。
また、弁護士が後遺障害の申請に関わると、医師に後遺障害診断書の書き方や追加検査の必要性などを助言してくれるので、適性な等級に認定されやすくなります。
後遺障害等級の認定があれば、逸失利益も請求可能です。
後遺障害慰謝料なども弁護士基準の算定になるため、賠償金の増額も十分に期待できるでしょう。
追突事故の加害者側に慰謝料を請求するときは、以下の「よくある質問」を参考にしてください。
慰謝料の支払いタイミングはいつなのか?同乗していた家族も慰謝料を請求できるのか?など、追突事故にはさまざまな疑問が生じます。
自分に過失がある追突事故も含め、慰謝料請求に関する疑問はすべて解消しておきましょう。
慰謝料は示談成立から1~2週間後に支払われます。
ただし、慰謝料の支払いまでには以下のステップがあります。
慰謝料の支払いまでの流れ
最短で慰謝料が支払われても半年近くかかりますが、示談交渉以外は日程を短縮できません。
慰謝料を早く受け取りたいときは、弁護士に示談交渉を依頼してください。
被害者の過失割合に応じて、慰謝料や示談金は減額されます。
たとえば、以下のような状況で追突事故が発生すると、被害者側の過失も追及されます。
被害車両が交差点などに駐停車していたときや、ブレーキランプが切れていたときは、被害者にも10~20%程度の過失が認められます。
急停車の場合、やむを得ない理由でも30%程度の過失になるでしょう。
同乗者も慰謝料を受け取れます。
追突事故によって家族や友人などの同乗者が怪我を負うと、一般的な慰謝料と同じ金額を請求できます。
また、加害者と被害者のどちらにも過失があれば、同乗者は両方から慰謝料をもらえます。
ただし、同乗者に以下のような過失があると、慰謝料は減額されるでしょう。
過去の判例によると、慰謝料の減額割合は危険運転の誘発行為が40%程度、無免許や飲酒運転を知っていた場合は20~30%程度となっています。
追突事故に遭った場合の慰謝料についてご紹介しました。
追突事故は軽微な負傷の場合が多いですが、その一方ですぐには症状を自覚しにくく、通院が長引くこともあるむちうち症になりやすい事故です。
また、追突事故は被害者の過失割合が0の場合が多いですが、その際に加害者側と自力で交渉する必要があります。
その際は相手側の保険会社が低い金額の基準で慰謝料などを提示してくるケースも多いです。
むちうち症などの症状が出た場合は、相手の示談に安易に応じることなく弁護士などに相談することも検討してください。